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高頭様の「着こなし哲学」とは
こんにちはファッションエディターの池田保行です。前回の内田様に続いて、第2回は高頭様の「着こなしの哲学」をご紹介しましょう。
高頭様(@ackntackn)は介護事業の経営支援をコンサルタントされる会社のご勤務。なんでもお父様は靴職人でいらしたそうで、手掛けていたのは70~80年代を席巻したシューズブランド<KISSA(キサ)>。知ってますか? DCブームの時代には、男性は<トキオクマガイ>、女性は<キサ>の靴を履くのがステイタスだったんですよ。たしかスニーカーを「ズック」って呼んだの<キサ>じゃないかったかな?
お洒落の英才教育を受けたご本人はアイビーの洗礼を受けた世代とのことで、<ブルックスブラザーズ>や<Jプレス>といったアメトラを経て、日本にクラシコ・イタリアのブームが訪れた80年代に、フランコ・プリンツィバァリーに惚れ込みます。
フランコ・プリンツィバァリーといえば、服飾評論家・落合正勝氏が愛用した名サルト。日本での展開は三陽商会が自社工場で仕立てていましたが、その型紙や作業工程はすべてフランコ氏自らが日本に足を運んで手掛けたもの。毎年のように本国からオーダー会に訪れたフランコ氏や必ず工場に足を運んで技術指導をしていたそうです。惜しまれながら数年前に、国内展開は終了しましたが、いまもフランコ氏はお元気なようで、昨年、『THE RAKE 日本版』にインタビュー記事が掲載されていました。同誌編集長の松尾健太郎さんは、長く落合正勝さんの担当編集でもいらした方ですね。
イタリアン・クラシックから乗り換えたVESTAのスーツ
話が逸れましたが、高頭様はしばらくのことプリンツィバァリーの顧客としてご愛用されていたようですが、前述したとおりフランコ・プリンツィバァリーは2017年に日本展開を終了。都内のお店は、すべてクローズしてしまいました。高頭様も路頭に迷ってしまいますよね。
さて、次なるスーツをどうしようか悩んでいた高頭様、何気なく『MEN’S EX』をパラパラをめくっていると、目についたのが「エディターズチョイス」のページ。編集部員が自腹で購入した逸品を紹介するコーナーに出ていたVESTAのスーツに、「ファッション誌の編集者が自腹で購入しているのだから、きっとこれは良いものに違いない!」と思われたそう。確かに雑誌は、広告出稿してくださるクライアントの商品を多く掲載しますので、その視点は正しいですね。
こうして晴れてVESTAのスーツに出会った高頭様ですが、それまで愛用してきたスーツを総入れ替えするまでVESTAに通われたそうで、その後はコートにマント、シャツまでお買い揃えになられたそう。VESTA以外にも都内の人気セレクトショップや、最近では海外のインターネット通販サイトなども利用されて、いろいろなお洋服を買い揃えるのがお好きなのだそうで、こりゃ筋金入りの着道楽でございます。
普通なようで普通じゃないジャケパンの流儀
さて、そんな高頭様の今日の着こなしは、VESTAで仕立てられたブラックウォッチのブレザー姿。金ボタンに3パッチの両フラップポケット、センターフックベントはアイビースタイルのお約束ですな。生地は英国で200年の伝統を誇る<ウェインシール>。もとはサヴィルロウに店を構えていた高級服地店が、のちに<スキャバル>傘下に入りブランドは消滅するのですが、2017年にブランドを復活しました。英国生地らしいタータンチェックは、このブランドの得意とするところでもあります。
合わせたシャツはVESTAのYouTube生配信でもお馴染み<ストリオ・ナポリ>。ナポリのシャツ工房の2代目でありシャツ職人のジャンルカが手掛けている8工程ハンドのオーダーシャツです。ふわりとやわらかそうな襟羽根の様子がよくわかりますよね。
ネクタイはタータンの一色を拾って
ネクタイは水玉のグリーン。<ニッキー per UA>とタグにあることから、イタリアの有名ネクタイブランドの、ユナイテッドアローズ別注モデルですね。グリーンのお色はブラックウォッチの一色を拾われてのこと。プレーンノットをわざと小剣をずらして無造作に結んでいらっしゃるあたり、アイビーにイタリアの感性を取り入れてらっしゃるポイントかと。
パンツはグレスラのようで実はカーゴパンツ
がちがちのアイビートラッドではない様子は、パンツの選びにも表れていました。こちらのグレスラは片ポケカーゴ。なんとこのカジュアルな仕様もVESTAでオーダーしたものとか。マチのないフラップ付きカーゴポケットでこの細身のシルエットは、イタリアものかなぁと思っていたので、なるほど納得です。
腕時計はドレスコード不問のスマートウォッチ
時計はApple Watch。今どきですねぇ。ドレスウォッチともカジュアルウォッチにも属さないスマートウォッチは、日本を代表する時計評論家、広田雅将氏をして「ドレスにもカジュアルにも許される唯一の時計」というだけあって、どんなスタイルに合わせても世界が許してくれる時計です。ベルトを型押しのクロコ柄に替えてらっしゃるところも洒落てますね。
じつは私もApple Watchを買おうかとずっと悩んでいるのは、どうにも老眼で文字盤が読めないことと、駅の改札で左手首を右側にタッチするのが果たしてどうなのか?という2点に尽きます。そんなことお構いなく、ファッションの一部に取り入れてらっしゃるのは、わたしよりいくつも先輩なのに、感覚がめちゃくちゃ若いですなぁ。
足元は靴下まで、しっかりお洒落!
足元はといえば、スペイン靴の<バーウィック1707>。ブランド名に入る「1707」は、この年、スペインで起きたアルマンサの戦いで功績を挙げ、その後も長く国民に愛されてきたバーウィック公爵の名を冠したもので、ブランド自体は1991年に創業されています。スペインの靴って、日本人の足に合うのに見た目にスマートで、英国靴ほどずんぐりしていないところがいいんですよね。コスパに優れるのに、しっかりグッドイヤーウェルト製法なので、履くほどに足に馴染みますよね。
ちなみに靴下はカラフルな水玉柄。これは海外通販で購入した<ハッピーソックス>。スウェーデン発の靴下ブランドは、海外でよく見かけまますよね。ぼくも何足か派手柄のソックス持っていますよ。日本の百貨店やセレクトショップで取り扱ってる靴下って、地味色ばかりなので、おもしろ色柄の靴下は海外通販、いいですね!
小脇に抱えたバッグがキーカラーでした
さきほどの靴下にピンクの水玉があったのですが、じつは高頭様、お持ちになられているバッグがなんとピンク! ナポリのタイブランド、マリネッラが手掛けている折りたたみ式のブリーフケース「ソットブラッチョ」ですね。これのピンクを選ぶとは、なんてお洒落な! しかも靴下とバッグで色合わせしてくるなんて、これはかなりの巧者でいらっしゃいます。いやはや脱帽。
お仕事柄、人前に立つことが多く、講演会などにも登壇されるというだけあって、背筋のしゃんんと伸びた、それでいて肩肘張らない着こなしはじつに見事なウェルドレッサー。「スーツは戦闘服」とおっしゃるように、仕事するうえでの攻撃力=説得力を高めてくれますよね。しかもけっして相手を威圧するような着方ではなく、まるでノンシャランな肩の力の抜け具合は話しかけやすさを醸し出されていて、取材するこちらもとてもリラックスして世間話も打ち解けてお話しできました。服装って相手への気遣いなんだってことがよくわかる着こなしでいらっしゃいました。
さて今回は第一回目ということで北側GMとランチを囲んでの一席でしたが、今後もこの企画続けていきたいと思っています。皆さまの「着こなしの哲学」ぜひ、聞かせてくださいねー